第2章 君しか知らない物語
桜舞う風の向こうで、君を見つけた。
公園のストバスコート。
シュートを放つ君は相変わらず成長していなくて。
それでもひたむきにシュートを放つ君の努力をわらうことはできなくて。
いつの間にかその姿から目を離すことができずにいた。
君は相変わらず光に溶けてしまいそうなくらい淡い存在だった。
けれども一途にバスケに取り組む姿が眩(まぶ)しく見えて、不意に胸の奥が疼(うず)いた。
思い出すのは、いつだってお決まりの光景。
「もう、しないって決めたのにな……」
俄かに日が翳(かげ)る。
冬の名残ともいえる冷たい風が心の隙間に吹き込んでくる。
取るに足らない、日常の些細なことが私の意識を現実へと引き戻す。
「……帰るか」
君に気づかれないようにそっと踵(きびす)を返し、公園をあとにした。