• テキストサイズ

君が笑う、その時まで

第2章 君しか知らない物語


 桜舞う風の向こうで、君を見つけた。



 公園のストバスコート。

 シュートを放つ君は相変わらず成長していなくて。

 それでもひたむきにシュートを放つ君の努力をわらうことはできなくて。

 いつの間にかその姿から目を離すことができずにいた。



 君は相変わらず光に溶けてしまいそうなくらい淡い存在だった。

 けれども一途にバスケに取り組む姿が眩(まぶ)しく見えて、不意に胸の奥が疼(うず)いた。


 
 思い出すのは、いつだってお決まりの光景。



 




「もう、しないって決めたのにな……」




 俄かに日が翳(かげ)る。

 冬の名残ともいえる冷たい風が心の隙間に吹き込んでくる。
 
 取るに足らない、日常の些細なことが私の意識を現実へと引き戻す。



「……帰るか」


 君に気づかれないようにそっと踵(きびす)を返し、公園をあとにした。
 
/ 204ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp