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君が笑う、その時まで

第11章 試合のあと(黒子視点)


 そんなこんなで先輩たちと別れ、僕はひとり帰路に着いていました。
 その途中、偶然通りがかった公園で見たことのある姿を見つけました。

 明かりの乏しい公園のストバスコートで、彼女は確かにそこにいました。

「伊織さん……」

 暗がりの中、彼女はじっとゴールを見据えて、両手に抱えていたボールをゆっくりと放った。
 ぶれることなく放物線を描いたボールは静かにゴールリングをくぐり、乾いた音を響かせて地面を転がった。

 彼女はゴールネットから零れ落ちたボールを拾い上げ、ゆっくりと僕に振り向いてくれました。
 僕を見つけて、驚くわけでも嫌がるわけでもなく、小さく笑ってくれました。

「黒子か……」
 
 その時の彼女の表情は、形容しがたいくらいに様々な感情が込み入ったように歪んでいました。

 僕には掛ける言葉が思い浮かびませんでした。けれども彼女はそれを見透かしているかようにわざと仰々しく溜息を吐いてみせました。

「あーあ。見つかっちゃったか。しかもよりにもよって君に見られるなんてね」

 それは普段の「したり顔」ではなく、諦めとも自嘲ともとれる寂しげな表情でした。

 それを見た時、ああやっぱり彼女は、と思いました。

 どんなにくだらないと言おうが、彼女の中には今も確かにバスケがある。

 そんな彼女に僕はどうしてももう一度バスケと向き合ってほしくて。

 僕は――……


「僕とバスケしてくれませんか?」

「……は?」

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