第28章 re:start
試合終了のブザーが鳴る。
歓声に沸く場内も、脇を通り過ぎていく対戦校の選手の表情も、何もかも意識の外だった。
流れ続ける汗が気持ち悪い。上がり切った呼吸を整えるのが苦しい。
それでいて、胸中が空っぽになった錯覚を覚える。
負けた。それは今更どう足掻いてもひっくり返すことのできない現実。
大差で負けた原因が実力不足だったというのは百も承知だった。
それでもやり場のない苛立ちが、悔しさがふつふつと湧きあがる。
――今すぐにでも吐き捨てたかった、かなぐり捨ててしまいたかった嫌悪感を自制し、日向順平は整列へと向かった。
――黒子テツヤはその場から動けなかった。顔を俯けたまま、拳を頑なに握りしめていた。