第10章 休憩時間
「なぁ、お前、あいつらと出逢った時、どんなだったんだ?」
いままで、あまりしてこなかった過去への質問に驚きながらも、知りたいのなら、と返事をする。
「うーん…長太郎と会った時は、お母様がまだ入院する前だから、本当に笑わない、というか表情を変えないように気をつけてたなぁ」
「ほう」
「私ピアノやってるじゃない?だからコンクールで何度か長太郎と会ってたみたい。同じクラスになるまで私は知らなかったけど」
「お前のピアノってどのくらいの腕前なんだ?」
「腕前~?長太郎と変わらないくらいかなぁ?」
「じゃあ、結構弾けるんだな」
「まあまあかな」
「今度、聴かせろよ」
「景吾、感動して泣いちゃうかも」
「なんだそりゃ」
名犬ラッシーを観て目の縁を赤くしていたの、知ってるんだから。
「良いものに感動するのは普通だろうが」
「うん」
ふふふ、と笑いがこぼれて、自分でも少し驚く。
景吾に視線をやると、優しく微笑んでいて、少し顔が熱くなった。
ほらね、こんなに心が乱れるのは貴方だけ。
「お前、ずいぶん笑うようになったな」
「…景吾の前だけだよ」
頬に手を当てると熱くて気持ちが良かった。
「あ」
景吾が首を傾げる。
「なんだ?」
「ちょたに眼鏡取られたままだ」
「あーん?なにやってたんだよ」
「えっと…告白されてた」
「…そうだな」
「ちょた、教室帰っちゃった?」
「いや、保健室で少し休むと言ってたな」
「そっか。お昼休み終わる前に返してもらわなきゃ」
「別にいいだろ?」
「嫌よ。笑えないもん」
「今は、笑ってるぜ」
近づく手に頬を乗せて上目遣いに景吾を見た。
じっと見つめ合うと胸がきゅぅんと締め付けられる。
小さく息を吐くと、景吾の顔が近付いた。
触れるだけのキスに我慢出来ずしがみ付くと、ふわりと抱き上げられ、身体が少し浮いた。
そのまま耳に噛みつくと、景吾が小さく「んっ」と言った。
かわいい。
抱きしめる力が強くなり、その温かさに身体を沈めた。