第7章 忍足先輩とキャプテン
「なぁ、自分、ここのクラスの人?」
聞きなれない関西弁に振り返ると、ボサボサ頭の眼鏡くん。いや、眼鏡の下はすごく美形。誰?
「なぁ、ここのクラスの人?」
もう一度言われハッとする。
「うん、そう、です」
「一緒やな、よろしく」
丸眼鏡は名乗らずそう言って教室に入って行った。
なんとなく入りづらくて躊躇っていたけど、続いて教室に入った。
幼稚舎組だから知ってる人も多いけど、なんとなく新しいことって苦手。
「お、席そこ?」
さっきも聴いた、中学生にしては低い声に視線を向けるとさっきの丸眼鏡くん。
「うん」
「隣かぁ、なんか縁があるなぁ、俺、忍足」
「あ、私、佐々木由莉奈」
「これからよろしくなぁ」
「うん」
忍足は丸眼鏡をキラリと反射させて笑った。
私の方が、少し背が高い。
ホームルームで自己紹介が終わると、忍足が私の前に立った。
「なぁ、部活決めてる?」
「ううん、まだ決めてないよ」
「見学行かへん?」
「いいけど、忍足はもう決めてるの?」
「まぁな」
「何部?」
「テニス部」
テニスか。私もだけど、学校柄お嬢様が多いからテニスを嗜む人は多い。
得意な方だけど、氷帝学園のテニス部は強豪と聞いているから、あんまり考えてなかったなぁ。
忍足に続いてテニスコートに向かうと、そこにはレギュラージャージを来た先輩達が汗だくで座り込んでいた。
他の、ずいぶんたくさんの部員も。
「今日から俺様がキングだ」
忍足と呆然とその光景を目の当たりにして思った。
楽しそう。
キングだと笑う男子は、入学式の時に啖呵を切っていた美形。一瞬女の子にも見えた。
アイスブルーの瞳。
不敵な笑み。
「なぁ、俺も混ぜてや」
気圧されながらも笑って忍足がキングに話しかける。
「いいぜ、強い奴ならな」
「忍足や、お前、おもろい奴やなぁ」
握手をする2人は座り込む先輩達の中で異様だった。
「ハッ、テメェも面白そうだな。跡部だ。テニス部は今日から俺のモンだからな」
ぶふぉっと噴き出してしまい、2人が私を見た。
私の笑みもこの場の空気には合ってない。でも限界。
「あはは、なんなのあんた達、面白すぎ、私も、テニス部にする!」
笑いながら言うと、2人が手を差し出した。
並べて叩く。
ぱぱんっと乾いた音がした。