第6章 おはよう
「ねぇねぇ野薔薇ちゃーん、俺とも打とうよ~」
ジロー先輩がきらきらと目を輝かせて騒ぐ。まだ景吾に襟首を捕まえられている。
「はい!良いですよ!私、負けませんよ?」
ジャージの袖を捲って腕を見せると、若が「細すぎ、鍛え直し」と小さく言った。
これでも結構たくましくなったと思うんだけどなぁ…。
「野薔薇ちゃんがどれくらい強くなったか試してあげる~」
景吾より明るい金髪が、朝日を浴びてきらきらしてる。絵画の中の天使みたい。
「私サーブでいいですね~?」
「E〜〜〜よぉ〜〜〜〜〜」
景吾に引きずられていくジロー先輩と反対のコートに走る。
ん…?
コートの外にこちらを見ている男子生徒がいて、目が合った。すぐに校舎の影に入ってしまったけれど、確かに目が合った。
誰だろう。
「野薔薇ちゃん、早く早く~」
「あっ、はい」
もう一度振り返ったけどもう姿はない。誰かも分からず、私は気にしないことにしてサーブを打った。