第4章 どこにも行かないで
大好きなんてもんじゃねぇ。
愛してる。狂おしいほどに。コイツに夢中で仕方ない。
目を開けたままキスを貪り合う。
野薔薇と出逢ってから、どんなに綺麗な景色を見ても、心が動かなくなった。
真っ青な海も、空も、単なる背景に過ぎない。
白いベッドは彼女の美しさを引き立てる。綺麗な背景だ。
口付けたままパジャマのボタンを外すと野薔薇の身体がぴくりと緊張した。
下着を付けていないからすぐに素肌が現れる。
そこにもキスを落とすと小さく身じろぎ「ん」と聞こえた。
「今日は、声殺せよ」
「景吾こそ」
悪い顔をして笑う野薔薇。
細い指が俺の髪を、耳を、首を撫でていく。
「ふ」
息が漏れる。
すくい上げるように両手が俺の頬に触れる。
「景吾は誰にも傷つけさせない」
冷たい瞳に自分の顔が写り込む。
コイツは分かって言っているんだろうか。
俺を本当に傷付けることが出来るのは、自分だけだということを。
口付けが唇、頬、耳に降り注ぐ。