第3章 過去
「逢崎、お前、正レギュラーのマネージャーにならねぇか」
「えっ」
話の転換について行けず感嘆詞が飛び出す。
でも、正直自信はあった。二年生の中でももう私より仕事が早い人はいない。
「部長推薦なんて、心強いですね」
「ああ、いいぜ、仕事が出来る奴なら誰だって構わねぇ」
視線に振り返ると跡部先輩は私をじっと見ていた。
「なんで顔隠してたんだ?」
「派手だからです」
「確かにな」
「跡部先輩の顔も、綺麗ですね」
「まぁな。でもお前、本当に笑わねぇんだな」
「ああ、癖なんです、眼鏡取ると上手く表情筋が動かないというか」
そこまで言って、跡部先輩がこちらをじっと見ていることに気付いた。
「お前、俺の女にならねぇか」
思わず振り返ると跡部先輩はただ微笑んでいる。
「は…?」
「ずいぶん色気のねぇ返事だな」
「正マネージャーじゃなくて、ですか?」
「いや、正マネージャーにはなってくれ、助かる」
「その後のは…」
「好きだ、付き合ってくれ」
跡部先輩の手が頬に触れる。
顔が近づく。そのままキスされた。
「んっ」
ずっと欲しいと思っていた。
アイスブルーの瞳が私を見ていた。