第3章 過去
アイスブルーの瞳。
彼の動きは、文字通り誰もが手や足を止めて見つめてしまうほど華麗だった。
また、光りに透けて少し金色に見える明るい髪が動きに合わせて踊り、絵の様で魅入ってしまった。
なんて綺麗で堂々とした空気を纏った人なんだろう。
入学式の挨拶では感じなかった胸の痛みに気付いて、まさか、そんな、と口の中で呟いた。
長太郎と若にもらった眼鏡のお陰か、中等部では少し友達が出来た。
2人についてテニス部に入部届けを出すと、マネージャーには面接があるそうで、奥の部屋に案内された。
緊張しながらノックをすると、どうぞ、と声が聞こえる。
顧問兼監督の榊先生は、校長先生みたいな立派な椅子に座って足を組んでいて、迫力があった。組んでいた長い足を下ろし、手を組んで「かけなさい」と言った。
「はい」
椅子にかけると低い声で問いかけられた。
「逢崎さん」
「はい」
「テニス部の部長は誰か知っているか」
「生徒会長の跡部先輩です」
「そうだ」
先生は少し考える仕草をした。
ロダンの考える人さながらの考えっぷり。
「志望動機を聞いてもいいかな?」
「仲の良い同級生がテニス部に入部するので、サポートをしたいからです」
榊監督が意外そうな顔をした。
「ほう?…現テニス部員については知っているか?」
「いえ、強豪だということと、部長が生徒会長だということくらいです」
勉強不足だと怒られるだろうか。
「そうか」
「いいだろう、マネージャーも体験期間がある。体力に自信はあるか?」
「はい、運動部は初めてですが、バレエやダンスを習っていたので体力はある方だと思います」
「良いことだな。視力は?」
「あ、失礼いたしました。視力は2.0くらいあります」
「ほう、眼鏡の理由を聞いてもいいかな?」
「はい、顔が派手だからです」
眼鏡を外して榊先生を見据える。
「良いだろう、着用に問題はない。自己判断で構わないが、普段の部活も着用したままが良いだろうな」
「はい、そうします」
眼鏡をかけると榊監督が少し笑った。
「すごいインパクトのある眼鏡だな」
「素顔を知っている人は皆そう言って笑います」
「はは、参ったな、全くだ」
クク、と口元を押さえ、悪役の様に笑う榊監督を見て少し緊張がほぐれた。