第2章 買い出し
「お前、眼鏡ちゃんとかけろ」
「け…跡部先輩が外したんですよ、さっき」
もう2人きりじゃない、部室を出たら誰に見られるか解らないからきちんと言葉を正す。
かけると少し目が小さく見える瓶底眼鏡。
「お前、そのブス眼鏡すげー似合うな」
「どうも」
自転車で行くつもりだったけれど、跡部先輩が乗れるわけない…というか乗るわけないので、商店街までは少し距離があったが歩くことにした。
帰りはタクシーを捕まえるだろうし、そうなると時間もそう変わらないから、まあいいや。
「そろそろ、正レギュラーのメンバーには言っても良いんだけどな」
「え?」
「お前が俺の女だってことだよ」
「嫌ですよ」
「あーん?なんでだよ」
「跡部先ぱ「景吾」
被せられる。
「だって、外ですし…」
少し見回しても下校時間なのでぱらぱらと生徒が見える。
車の送迎も多いがバス停まで歩いたり、電車に乗る生徒ももちろんいる。
「だから俺様が良いって言ってんだろーが」
「でもダメです。私が八つ裂きにされても良いんですか?」
「んなこと俺がさせねーよ」
「四六時中隣にいてくれるんですか?」
「…」
「私はとりあえずこのブス眼鏡で身を守ってるし、多少は腕も立ちます。そのうち言っても良いですけど、とりあえず今は上手くやってますから、もう少し先にしてください」
「…そのハッキリ言うところ、好きだぜ」
「ありがとうございます」
微笑んで見せたが跡部先輩は可笑しそうに笑って、またほんと似合うな、眼鏡、と言った。
コピー用紙を買って部活の備品ついでに薬局に寄る。
「お前、怪我でもしてんのか?」
「いいえ?怪我するのは運動してる人ですよ。ちょっと個人的な物ですけど、絆創膏の真ん中のサイズと、スプレーの消毒液が無くなったから欲しくて」
「お前の部活用ポーチは四次元かよ」
「いいえ、普通の三次元です」
買い物を全て済ませると、両手が荷物だらけになった。
「ほら、貸せ」
「いえ、部長に持たせるわけには」
「いーんだよ、荷物は男が持つもんだ」
「ハイ」
通りに出てタクシーを捕まえると、やっぱり自転車で往復しても変わらない時間で戻ることが出来た。
タクシーの中で手を握られ胸がくすぐったいような、落ち着かない気持ちになった。
部室でのことを思い出して顔が熱くなる。