第2章 三月と掃除*
今日でこの仕事も3回目
そろそろ仕事になれてきた。
最初は色々不安だったが、無事アイドルとやらにも遭遇しないし、口喧しい上司もいないから今は結構快適だったりする。
『どっこいしょ……っと』
私は二個の水の入ったバケツをいっぺんに持ち上げた。
ここから水道までそんな距離ではないし運べるだろう。
バケツの水を取り替えに行くのだが、一回一回行く方が面倒なので重くても我慢。
つるっ。
『げっ……』
不覚にも私は忘れていた。
今ここモップ掃除したばっかりだということを。
こりゃ、転ぶわとおもった時だった。
「あぶねぇ!!」
その声ともに私の体には衝撃はなく。
目を開けると……オレンジ髪の少年に抱えられていた。
「ふぅ。あぶねぇ……間一髪。」
『……ありがとう。』
「たく、おばちゃん危ないぜ。良い歳なんだから無理すんなよ。重たいもんだったら俺が手伝うから。」
おばちゃん?確かに君みたいな年下からみたらおばちゃんなんだろうけど、失礼な。
私はすぐに立ち上がりバケツを拾って元来た道を引き返えそうとする。
「なっ、おばちゃんどこいくんだよ!」
『水こぼしちゃったから、モップとってくる。後さっきからおばちゃんおばちゃんって……私は君よりおばちゃんじゃない!」
私はマスクと三角巾を外し目の前の少年をみる。
「えっ!?若っ!あっごめん!!マスクと三角巾被ってたから全然わかんなくて💦」
『分かってもらえたらならそれでいいよ。てか、さっきはありがとう。ほんとに助かった。小さいのにたくましかっだぞ少年。グッジョブ!』
そして私はモップを取りにその場を後にした。
「ん?少年?…………って、おい!お前も間違えてるぞ!おいっ!!ちょっとまて!俺は小さくても21だぁぁぁぁぁあ!!!」
そんな嘆きがあったことは知らず。