第5章 一織と掃除*
さてさて今日も寮の掃除がんばりますかと!
「あっ!見つけましたよ!」
『ん?』
振り返れば黒髪の青年がすごい剣幕でこっちに向かって歩いてきた。
「貴女ですね!最近入ったばかりだという清掃の方は!」
『はぁ……いかにも。』
「掃除機をかけるとき窓を開けていますか?」
『開けているとおもいますけど……』
「思いますけどじゃ、困ります!良い歳した大人がだらしない!廊下にいつも埃が舞っています!それから、モップの水もしっかりきってください!西側の廊下なんてなぜか水びたしだったんですよ!水をよくきらないと床が滑りやすく……」
…………あーぁ。なんだこいつ。姑か?
いきなり出てきて、埃が舞ってる?モップの水をしっかりきれ?男のくせになんと細かい。こーゆうのが上司だとほんと困るよね、私絶対嫌だわ。
「ちゃんと聞いていますか?」
『っはい!ちゃんと聞いてます!!」
「まったく……埃など舞っていたら喘息の発作にも影響が」
ん?喘息……?
『あのもしかして喘息なんですか?』
咄嗟に自分の口を隠す黒髪さん。
あーぁ。今のタブーぽぃね。訳ありか。
めっちゃ気まずい空気流れてるね。
『…………ユリ根のスープ。』
「え?……。」
『ユリ根のスープと喘息の咳を少しでも和らげるなら大根おろしの汁+蜂蜜を混ぜたもの飲ませるのが良く効くよ。』
「なぜそんな事を……?」
『私のせいで喘息がひどくなったり、苦しくなったりするのが嫌だから。まぁ、喘息の事は黙っておくよ。』
「え、あぁ…はい。黙っといてもらえるとありがたいです。」
『今度からちゃんと窓とか埃、気を付けるわ!』
「あ、当り前です!!」
黒髪くん顔さっきのしょんぼり顔じゃなくて、最初のプンスカ顔にもどってきたね。よしよし。
「貴女何笑っているんですか!!」
『いいや、なんでもないよ!てな訳で、喘息良い物も教えてたし……西側の廊下の件は許してくれ!後から掃除しようと思って忘れてた!じゃあな!!』
全力で走り去る私。
「あっ!やっぱり貴女が!!ちょっと待ちなさい!!まだ私の話は終わっていませんよ!!」
くっなんて逃げ足の早い!
まぁ、でも今回は多目にみてあげます。
喘息に良いものも教えていただいたのでね。
「あっ、さっきの方の名前聞くの忘れていました。」
今度また会ったら聞くとしましょう。