第5章 コンパス
松本side
11月
今月中旬に控えた係長昇格のテスト勉強で俺は毎日忙しかった
手をつけてみたらそれなりに難しくて
こんなの大野さんもやったんだな、と思うと
改めてすごいなと思った
まあ…でもサラリと受けてサラリと受かったっていうのも大野さんならありえそうだけど…
「松本くん」
デスクでパソコンに向かっていると、大野さんに呼ばれた
「はい」
「今日、夜空いてるか?」
今日の夜は…約束はないけど、勉強をするつもりで
でも、せっかくの大野さんからの誘い…行きたい…
一瞬返事に詰まって悩んでいると
「息抜きも必要だぞ?」
いつものふにゃっとした笑顔で言ってくれて
それにつられて俺も顔が緩んだ
「はい、是非!」
「何が食いたいか考えておけ」
何かがなくたって頑張るけど
何か楽しみがあるとやっぱり力は違うもので
この日はいつもより仕事のペースがあがった気がした
でも酒より大野さんとの時間が楽しみだから
食いたいものなんて浮かばなくてまた悩んだ