第4章 USBメモリ
大野side
松本くんが車のキーを取り出して歩き出そうとした。
「松本くん!」
呼び止めて、カバンからネルシャツを取り出した。
それを松本くんに押し付けた。
「え…?なんですか?」
「ジーンズの染み…目立つから…」
ホワイトジーンズだから、もっこりの横についてしまったコーヒーの染みがなんか卑猥で…
「腰に巻いとけよ…」
そう言って荷物を持って歩き出した。
「あっ…あのっ…大野さんっ」
「え?」
「ありがとう、ございます…あのっ…送ります。乗って行ってください…」
ネルシャツを腰に巻くと、俺の荷物をひったくった。
そのまま松本くんは駆けるように歩き出した。
「おっ…おいっ…」
結局、押し切られて家まで送ってもらった。
車の中で、最初は無言だったけどぽつりと話ができた。
他愛ない話だったけど、嬉しかった。
家に入るとどっと疲れがきた。
でも俺の息子は元気いっぱいで…
”じゃあ、また明日…”
そう言って別れた松本くんの顔が、綺麗で…
また思わず俺は、自分を握りしめた。
終わってから、また我に返った。
「はぁ~…なにやってんだよ、俺…」
ポカリ、頭を殴った。