第3章 ホワイトボード
松本side
「あっ…」
コロコロとボールペンがデスクから転がっていった
それは大野さんのほうに転がっていって…
「はい」
それに気づいた大野さんが拾ってくれた
「あ、ありがとうございます…」
手を伸ばして受け取ろうとしたとき
指先と指先がぶつかって思わず手を引っ込めてしまった
「すいませ…っ」
「いや、悪い…」
それだけで顔が熱くなっていく
大野さんを看病しに行って
キスをしてしまったあの日以来
まともに大野さんと話せていない
大野さんも
不可抗力とはいえ、俺があんなことをしてしまったから気まずいのか
前みたいには話してくれなくて…
でも、家までいれてもらえたんだ
もっと距離を縮めたい
でももっと気まずくなるのは嫌だ
だからどうしていいかわからない
そんなことを考えていると
「松本くん」
突然大野さんに呼ばれて体が跳ねた
「は、はいっ」
「今日空いてるか?」
「…え?」
「この間の礼に飯でもどうだ?」
思いもよらない大野さんからの誘いに
「はいっ、是非!」
礼なんて…と、遠慮することも忘れて身を乗り出していた