第14章 すれ違う中で
どちらからともなく、ゆっくりと離れて、お互いの顔を見た...
涙と鼻水で、ぐしゃぐしゃで、目は真っ赤に腫れてて、
その酷い顔に、俺たちは笑い出した。
「翔..酷い顔だよ..イケメンが台無し..」
「雅紀だって..別人だよ..」
..........
俺たちは笑いあった。
声を上げて、腹を抱えて、
「...はぁ、はぁ、もうぉ...腹痛て〜..」
「..はぁ、マジで、死ぬかと、思ったぁ..」
.............
「行こうか...」
「うん..」
俺は、翔に手を引かれて、子どものように後ろから着いていった。
普段は冷たい彼の手は、
いつもより少しだけ温かだった。
「...カフェオレでも入れるよ...」
翔が優しく言った。
俺たちは、
深夜のリビングで、他愛もない話で盛り上がった。
別にこんな夜中に話さなくてもいいことだけど、
翔の友達の話や、
俺の実習のこと、
一昨日、学食で食べたカレーが、いつもより辛かったとか、
風間が、帰りに捨て猫を拾って困ってるとか、
.......すれ違いの日々の中で、
少しずつ出来た隙間を埋めるように、
俺たちは、時間の経つのも忘れて話した。
.....一緒に暮らしてるってことで、安心して、相手のことを思いやる気持ちを忘れてた。
モヤモヤやイライラ、
不安を貯めたままでいると、
心が病気になるんだよ...
翔は、そう言って笑った。
これからも、喧嘩したり、
お互いのこと見失いそうになるかもしれない。
そんなとき。
話していこう...
繋いだ手を離れないように、
もう一度しっかりと繋ぎ直そう。
だって
俺たちは
この先も、ずっとずっと、
一緒にいるのだから。
ずっと....いっしょに...