第5章 いつもの(神田)
「ハイおまちドーン♡」
いつもの様に料理長から受け取った蕎麦は、いつもと配置が違う様な気がした。この手のことに疎い自分が、それだけいつも同じものを食べていたのだなと神田はぼんやりと考える。
「ごめんね〜今日いつもお蕎麦作ってる子風邪ひいちゃって療養中なのよ〜〜。」
蕎麦を見つめて止まった視線に気づいたのか、ジェリーが謝ってくる。というか声をかけられてはじめて自分が止まっていることに気づいた。
「構わない。腹に入れば同じだ。」
蕎麦であればそれでいい。
そこまで味にこだわりがあるような人間でもないから。
すすったそれは、確かにいつもとは違った気がした。
気がする程度の舌しか持ちあわせていないとも言えるが、毎日食べているものだ。さすがにわかる。
でも、それだけだ。
いつものように空になったお盆を下げると、鍛錬場へと足を進めた。