第6章 カトン
母は頷いた私を見ると、満面の笑みになった。
「ルミは、カトンって知ってる?」
母は私の隣に腰を下ろすと、悪戯っぽくたずねてきた。
『パパがちゅかうの?』
私は、父が見せてくれた豪火球を思い出してそう言った。
前世の記憶からして、うちはは火遁を得意として間違いないだろうと思ってこたえる。
だか、母は引っ掛け問題にうまく引っ掛けたとでも言いたげな表情で口を開いた。
「それも火遁だけど、ママが言いたいのは別のカトンよ?」
そう言ってにこりと笑う。
私は、原作知識にも、こちらに転生してからの知識にも、火遁以外のカトンとやらが無いため首を捻った。
「歌と書いて歌遁なの!」
母は嬉しそうに私に教えた。
「見てて?」
まだ理解出来ない私に母はそう言うと目を閉じた。
「かぜよ、みずよ、大気を冷やせ、白い花弁を届けておくれ
白い華を此処に咲かせて。」
母がゆっくりと歌い出した。
私は短いその歌に聞き入っていた。
「ルミ、見て!」
母の歌を聞いてぼうっとしていた私に母が声をかけてきた。
だが、母のさすものを見てすぐに驚愕した。
『雪?』
もう7月になったと言うのに、庭には雪が降っていた。