第7章 梅雨。
就業から3時間。
すべての資料を黒尾さんに送った。
「「『はぁ…』」」
みんなからため息がこぼれた。
『終わった…ね。』
「ご飯奢る。梢、月島、助かった。」
「じゃあ、フレンチでも予約する?」
そう言い、スマホをいじりだした月島くん。
デスクに体を預けだらりとしていた灰羽くんはすごい速さで起き上がり月島くんに詰め寄る。
「さすがにフレンチはっ!ファミレスとかじゃだめ⁈マジで金ないって‼︎」
「冗談だって…」
『どうせだしお腹すいたから今から行かない?』
「おっけー!」
駅前のファミレスに行こうとオフィスを出る準備をしていると、灰羽くんのスマホが音を奏でる。
「はい、黒尾さん?
はい、はい、
え?
マジすか…
わかりました。」
顔を上げた灰羽くん。
しゅんとした顔で私達を見た。
「ミスあったみたい…1つ。」
ミス自体はあまり時間はかからないみたい。
『じゃあ待ってようか?』
「大丈夫。先にファミレス行ってて?」
「わかった。じゃあ行こう?椎名サン。」
準備を終えた月島くんが私を待つ。
月島くんが私を見つめる。
「…うん……」
震えそうになる体を押さえ、私は月島くんのそばに走り寄る。
すぐそこのエレベーターまでの距離がものすごく遠い。
チン
あらかじめ呼んでいたらしいエレベーターが音を立て開き、私達を招き入れる。
1のボタンを押すと、ぐいと顎をすくわれた。
「ばれそうでばれない…こういうのってものすごくクセになるよね…」
エレベーターが閉まり切る直前、月島くんの唇が私に触れた。