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BLEACH お題消化2

第3章 六十七、月夕



 ピィピィ、と二度短く指笛が聞こえ、夜一は瞬歩の足を止めた。月が煌々と照らす夜。屋根の上から見下ろすと、地上からこちらに手を振る満流の姿が見えた。
「や」
 大きな杉の木の下、幹に背を預けて立っている。月の光が明るすぎて、濃い影が落ちているため、表情はよく見えない。
「『仕事』帰り?」
「まあな。簡単な仕事じゃったが」
「そう。お疲れ様」
 一足飛びに満流の傍まで行く。跳ぶ途中で猫の姿に変化すると、満流は夜一が着地する前に両手を広げて受け止めた。黒い毛並みに鼻を埋めると、すん、と軽く匂いを嗅いだ。
「血の臭い、するよ」
「そうか? 帰ったら湯浴みをせねばならんな」
 満流は夜一を肩に乗せ、ばさばさと落ちた夜一の衣装を拾い上げると、木の下を出てゆっくりと歩き始めた。
「どんな仕事だったの?」
「企業秘密じゃ」
「そっか。僕も丁度秘密の仕事があってね」
「なんじゃ」
「黒猫を拾って、家で風呂に入れること」
「そうか、それは大変な仕事じゃな」
「うん。中々夜中に黒い猫が見つからなくて、少し苦労したよ」
 でも今日は月が明るいから、と満流は夜の静寂を崩さぬように囁いた。



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