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BLEACH お題消化2

第1章 七十一、黎明



「お前は,何時からそんな体になったのかネ」
 寝台で無数の管や線に繋がれて身動きの取れないまま,満流は軽く目を見開いた。聞けばとんでもない答えを滔々と述べ始める涅だが,自ら質問を発することの少ない人物だ。世間話をしかけようなどとは夢にも思わない相手からの質問に,少し驚く。
「こんな体って,どんな?」
「察しが悪いネ。元人間が霊力を貯えすぎて,殻を被った霊力の塊になった経緯だヨ」
 研究のためか。それならば自らの質問も腑に落ちる。
「ううん,何せ大昔のことだからなあ」
 満流は人間ではない。
 正確に言えば,現在はもはや人間というべき存在を逸脱している。
 霊力の塊が人の形を成し,思考を得て,動いているようなものだ。
「全然覚えてないけれど,産まれたときは母がいて父がいたはずだよ。静流という妹もいたしね」
「ほう,やはり始まりは普通の人間かネ」
「流魂街出身で,当時はまだ霊力を持った人間はいても,死神なんていなかった時代だけどね。まあずば抜けて霊力の高い人間だったことは確かだけれども」
 所狭しと積み上げられたモニターは,規則正しい山谷を描いたり,ただただ上昇していく線を描いたり,緑に光ったり赤に点滅して警報を鳴らしたりと忙しい。
「気付いたら死んでも死なない体になっていたよ。初めて死んだのは静流が死んだときだから,何千年前になるんだろう」
 指折り数えようとしたが,少しでも体を動かそうとすればけたたましく警報が鳴り響くため,断念した。指を折ったところで数えられるわけでもない。
「きっかけなんて,何もなかった。いつの間にかこうなっていたんだ」
「フン……何の参考にもならないネ」
「ははは,ごめんごめん。大体そんなメカニズムがわかったら桐生や喜助の研究が数百年は進んでいるだろう。僕も死んでる」
「とっとと研究を進めて,さっさと死ぬことだナ」
「そうだね。その時はなるべく穏便な方法で現世と尺魂界のバランスを取ってくれよ」
「死ぬ者に言われたところで知ったことじゃないネ」
 話は終いだ,もうお前の口に用はないとばかりに涅は背を向けた。満流も,思い出せないほど昔の過去には用が無い。もう記憶の彼方に消えてしまった妹の面影を寂しく思いつつ,軽く息を吐くと目を閉じた。



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