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BLEACH お題消化1

第6章 二、紅梅



 砕蜂は隊首室に入った瞬間、鼻をくすぐる香りに目を瞬いた。
「あ、砕ちゃん」
 大前田を伴って、許しも無く隊首室に入っていたのは満流だった。
「勝手に何をしている」
「いや、ちょっと誕生日のお祝いをね」
 満流の手元には、白梅と紅梅の生け花があった。机の上で微細な調整をしていたらしい。
「誕生日おめでとう砕ちゃん!これ僕からのプレゼント!」
 はい、と懐から出した封筒を、半ば無理矢理押し付けられる。
「な、なんだこれは」
「僕御用達の料亭御食事券ペアチケット!偶にはゆっくり美味しいお酒とお料理を楽しんで!」
「え、あ、ぺ?」
「とっても美味しいお店でね。特にお魚がいつ行ってもいいのを出してくれるんだ」
「さかな……!」
「僕の名前出せば個室も用意してくれるから。お庭が見える個室でね。今の季節なら梅が綺麗に咲いていると思うよ」
 目を白黒させていた砕蜂は、その言葉に生け花へ目を転じる。
「そ、そうか。その梅も、お前からの祝いか」
「ん?これ?」
「ああ。毎年気付かぬうちに、隊首室に飾ってあったのだ。そうかお前だったのか」
「ああいや、これはね」
 満流がくすりと笑う。
「匿名希望の君のファンから。ねえ、梅の花言葉って知ってる?」
「花言葉?……知らぬな」
「梅の花言葉はね」
 忠実。
 どこか静かに伝えられたそれに、砕蜂はその送り主を知る。
「どこの誰がって、詳しくは言えないけれど。うちの虎の字が君に、永遠の忠誠を誓って。僕はただの代行人」
「……そうだったのか」
 砕蜂が、その細い指で花弁に触れる。ふわりと気高い香りがした。
「じゃあ僕は帰るよ。確かに渡したからね」
「ちょ、ちょっと待て満流!」
 慌てて渡された封筒の中身を開ける。二枚の食事券。
「ぺあちけっとというのは、要するに二人分の券ということだな?」
「うん、そうだよ」
「これを」
 砕蜂はそのうちの一枚を、満流に手渡した。
「これを、その、虎の字とやらに」
「ふふ、うん。わかったよ。必ず渡す。何か言伝は?」
「……その、あ、」
 ありがとう、と。
 頬を微かに赤らめて、小さく呟いた砕蜂に、満流は微笑んだ。

「僕にはありがとう無いんだ……」
「あ、アリガトウゴザイマス……」
「なんでそんなに嫌そうに言うんだ……」



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