第4章 不器用でも(田中龍之介)
ダンッダンッ
体育館中に響くボールの音
私はこの音が好きだ
幼いとき、兄さんに連れられ見たバレーボールの試合に釘付けになった
あれから私はバレーボール部の主将にもなれた
「田中」
ふと監督に呼ばれた
『どうしましたか?』
「お前の兄来てるぞ」
『えっ!?』
監督に言われて驚いた私は体育館の外に走った
『兄さん!』
「おっ!!」
『今部活中じゃないの!?』
ほぼ掴み掛かるようにして私は兄さんに言い放った
「実はな。体育館が改装工事でしばらく体育館が使えねえんだ」
『で、部活が無いから私の所に来たと..』
「そういうことだ!」
『いや。家帰れよ..』
もう言う言葉が無くなって疲れながら言うと後ろで「ゴホン」と聞こえた
『監督』
「せっかく来てもらったんだお兄さんに見てもらったらどうだ?」
『はい!?』
「良いんっすか!?」
監督の口から放たれた予想外の言葉に返す言葉が見つからなかった
『はあ...分かりました。兄さん付いてきて』
もう諦めて兄さんに来てもらうことにした