第1章 娼婦
『城下の人形道具』
いつからか、そう呼ばれるようになっていた。
特に不快だとか、いやだとか思わなかった。
ただ、それが私の呼び名なのだと理解し、納得していた。
気が付くと、そこはどこかの部屋らしかった。
身体が痛い。
だけど、どうして体を痛めているかが分からない。
鼻をつんざくような焦げたにおいが鼻腔を刺激し、微睡の中の私を覚醒させる。
うっすらと瞳を開けると、ぼやけた視界の先で四角形のパネルに区切られた天井が目に入った。
白い。
初めて認めた気持ちは、ただの形容詞だった。
痛覚でも、動揺でもないそれを口に乗せると、掠れた声が喉から出てきた。
相当な傷を負っているらしい。
冷静に判断すると、次いで男の声が聞こえてきた。
恰幅のいいその男は、この店のオーナーだと名乗った。
無造作に放り投げられて、大きな城門が目に入る。
打ち付けた尻を摩りながら立ち上がると、ふと頬に冷たいものが触れるのが分かった。
「・・・雪だ」
年間的に気温が低いこの国では、雪はそう珍しいことじゃない。粉雪が舞い落ちて、足元を濡らしていく。
白い結晶はコンクリートに触れて、その熱に溶かされ、雫となっていく。