第28章 -ことばの裏の意味-(菅原孝支)
「うわ…混んでる…コレ乗るの?」
「しかたないべ。コレ見送ったら、けっこう待つし。」
そう言った孝支に満員の電車に押し込まれる。
普段あまり混まない電車が、今日は遅れてしまっていたため、かなり混んでいた。
「大丈夫か?」
「だ…大丈夫だけど…」
ち…近いっ‼︎満員だからしょうがないけど、孝支とくっつきすぎ‼︎ギューッて抱き締められてるみたいだよぅ‼︎
「なーに意識してんだよ?」
「え?」
「大丈夫だって‼︎こんくらいできづなに欲情しないから(笑)」
「な…っ⁈い…意識してるわけないでしょ‼︎欲情とかされたら、こっちが迷惑っ‼︎」
「きづなっ‼︎声デカイ‼︎シーッ‼︎」
「…っ⁈」
思わず言い返してしまった声はかなり大きくなっていたみたいで、周りからチクチク視線を感じる…。
ただでさえ、孝支に言われたコトが恥ずかしいのに‼︎
わたしは恥ずかしくて、でもちょっと悔しくて、孝支の足を軽く蹴ってから下を向いた。
赤い顔を孝支に見られないように…。
「はぁ〜。すげぇ混んでたなぁ。」
地元の駅に着くと、やっと孝支から解放される。
ドキドキしていた気持ちもやっと落ち着いてきたけど、ほんの少しだけ、もうちょっとくっついていたかったな…とか思ってしまうわたしは孝支に欲情していたのかな…?
ち…違うっ‼︎そんなわけない‼︎
「きづな?置いてくぞー?」
自分の考えを頭の中で否定していると、孝支に呼ばれて、わたしは慌てて孝支の後を追いかけたけど、孝支はいつもより歩くのが早い。いつもはちゃんと待っててくれるのに…。
「待ってよ‼︎」
わたしは孝支の腕をギュッと掴んでやっと孝支に追いついた。
「はぁ〜。きづなはさ〜?」
孝支は立ち止まってため息をつきながら、わたしを見つめた。
「もう少しことばの裏を読めよな?」
「え…?」
「欲情…」
「…?しないんでしょ?」
はぁ…何回も言わないでよ‼︎わかってるのに…また胸がギュッて痛くなっちゃう…。
「バーカ‼︎」
「孝支っ⁈」
孝支が突然ギュッとわたしを抱き締めた。
「しまくってたけど?」
「な…っ⁈」
「先に言って自分のコト牽制してたんたけどな〜?」
そう言った孝支はわたしの前髪をかきあげ、オデコにチュッとキスをした。
---End---