第15章 -無防備-(宮地清志)
「どっちが勝つかなー?」
「さぁな。」
夏休みのとある日。誠凛と海常が練習試合をするらしく、清志クンと誠凛高校へ向かう中、わたしは久々に清志クンと2人で出掛けるので、1人デート気分で、電車を待っていた。
まぁ、誠凛で木村先輩たちと合流するし、清志くんは、それまでの間わたしを子守りしてる…くらいにしか思ってないんだろうけど。
「ほら、乗るぞ!」
「え⁈」
わたしがぼーっとしていると、電車がちょうど来ていたらしく、清志くんは呆れ顔でわたしの右手を握ってくれた。
「あ…!ゴメンね。」
電車に乗ると清志くんはすぐに手をはなしてしまう…。
わたしは仕方なく、ちょっと淋しい右手を伸ばし、つり革に掴まった。
電車は空いていたし、すぐに降りるから、座らない。
清志くんは開かないドアのほうの少し高いつり革に掴まっていた。
掴まるというか…触るというか…。
「ん…」
反対にわたしは、つり革には掴まれるけど…微妙にギリギリ。電車が揺れるたびにわたしは手を伸ばして、少し背伸びをしていた。
「…おいっ‼︎」
「ん…なぁに?」
清志クンに突然呼ばれ 、清志クンを見上げると、突然清志クンに腕を引っ張られた。
「持てねぇなら、ムリすんなよな。」
「でも、持たないと危ないし…」
「ん‼︎」
清志クンはわたしの空いていた手を自分の腰のあたりに掴まらさせた。
「清志クン⁈ど…したの⁈」
Tシャツ越しとはいえ、清志クンのしなやかな筋肉のついた身体に触れ、急にドキドキしてきてしまう。
「吊り革持てねぇなら、こうしときゃいいだろ?」
今度はわたしの腕を掴んでいた手をそのままおろし、清志クンはわたしの手を握った。
「えと…あの…っ」
自分の頬がかーっと赤くなるのがわかる。
「だから‼︎持てねぇなら、こうしとけ‼︎」
「でも…」
う…嬉しいけど…恥ずかしいよっ‼︎
「あ⁈持てねぇんだろ⁈だったら言うコト聞けよ‼︎轢くぞ⁈」
「…っ⁈は…はいっ‼︎」
ドキドキがおさまらない。皆に会った時に顔赤くないかな…とか色々考えてしまい、わたしは清志クンの想いなんて知る由もなかった。
「(吊り革持とうとするたんびに腹見えてるし、ブラまで見えそうなんだよっ‼︎…ったく…気付けっつーの…無防備すぎんだろーが…)」
---End---