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〜Petite Story〜

第14章 -おおかみ-(氷室辰也)


「すみません。疲れてるのに送っていただいちゃって…」

遠征後、渋滞に巻き込まれ、学校に戻ってきた時にはもう外は真っ暗。
でも、わたしは真っ暗な帰り道を1人ではなく、氷室先輩と歩いている。

「疲れてないし、きづなを1人で帰すほうがよっぽど心配だから、気にしなくていいんだよ?」

「…っ⁈あ…ありがとうございます。」

アメリカ帰りだから⁈それとも氷室先輩だから⁈こっちが恥ずかしくなるようなコトを氷室先輩はサラリと口にする。

「はは…そんなにかしこまらなくても。オレとしては嬉しいけどね。皆がやりたがったナイトの役目を仰せつかったんだから。」

「そんな、オーバーですよ!」

実は解散する時に荒木監督が「誰か宮岡を送ってやれよ?」と言った時、ありがたいコトに劉先輩や福井先輩も「オレが行く」と言ってくれたのだけど、荒木監督が「氷室、おまえが行け。」と、氷室先輩をご指名したので、氷室先輩がわたしを送ってくれているのだ。

「そんなコトないよ。皆きづなと2人きりになりたいんだよ?」

「え⁈そんなわけないですよ!」

わたしが氷室先輩のことばを否定すると、氷室先輩は微笑んだまま、ことばを続ける。

「アツシには送り狼にならないようにって言われちゃったけどね。」

「あはは♪氷室先輩が一番狼にならなさそうなのに〜?変な紫原くん。」

ウチの部の中でダントツで紳士で優しい氷室先輩が送り狼なんて…

「ほんとにそう思ってる?」

「え…?」

氷室先輩が突然立ち止まり、わたしの手をギュッと握って見つめてきた。

「だとしたら、きづなはもっと危機感を持たないといけない。」

氷室先輩の色っぽい顔がどんどん近づいてくる。

「ひ…氷室先輩…⁈」

思わずキュッと目を閉じてしまう。



…チュ。



…っ⁈


おでこに…キス…⁈



「今日はココまでかな。」

氷室先輩はわたしの肩をギュッと支えたまま、わたしの顔を覗き込み、悪戯っ子のような表情で微笑んだ。





「オレもきづなを食べたい狼の1人だって…覚えといてね。」



---End---


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