第1章 -甘いことば-(青峰大輝)
「大ちゃん…」
真っ白なシーツにくるまりながら、大ちゃんの色黒の腕にギュッとする。
大ちゃんはそっと頭を撫でて、わたしを抱き寄せてくれるけど、今日もそれだけ。
何もことばはない。
こういう時って、これからが普通甘い時間なんじゃないの⁈これからが楽しいんじゃないの⁈
まぁ…大ちゃんはことばより態度で示すタイプだし…。
わかってる!わかってるけどさ…。
〜♪
大ちゃんの腕の中でちょっとだけ拗ねていると、2人のスマホが同時に鳴った。
「誰だろ…?」
わたしは脱ぎっぱなしのブラウスに手を伸ばし、大ちゃんの腕から抜け出した。
「…っ⁉︎おい‼︎」
大ちゃんの声を背中で聞きながら、わたしはスマホを見た。
「あ…今吉さん…」
バスケ部メンバーで作ってあるメッセージアプリのグループに明日の時間変更の連絡が今吉さんから届いていた。
「あ⁈なんでおまえにくるんだよ⁈」
大ちゃんの声に振り返ると、大ちゃんはクルリとわたしのほうを向いて起き上がっている。
「え?個人的にじゃなくて、グループのほうだよ。明日の部活の時間変更だって。」
「ふーん。」
それだけ言うと、大ちゃんはまたゴロリとわたしに背を向け、寝転んでしまった。
はぁ…。着替えようかな…。
時間を見ようと思って、手元のスマホをもう一度見る。画面はグループのトーク画面のまま…。
何気無くスクロールしていくと、あることに気がつく。
「今吉さんて意外とマメだよね?」
「あ⁈」
「だって部活の連絡とかこまめにしてくれるし、大ちゃん、いつも返信しないから、大ちゃんがちゃんと見たのか、わたしに聞いてくるもん。」
「へー。」
「今吉さんてあぁ見えて、エッチのあととかすごい優しそう…。」
「あ?おまえ、あいつとしたいのかよ⁈」
「そんなわけないじゃん!わたしは大ちゃんだけで十分ですー。」
わたしはそう言いながら、床に脱ぎ散らかされている下着に手を伸ばした。
「おい!何やってんだよ?」
「え?そろそろ服…⁈ちょっ…大ちゃん⁈」
突然大ちゃんに腕を引かれ、わたしはまたベッドに引き戻され、強く抱き締められる。
「2人でいる時にあいつの名前出すな。」
…⁈
わたしが期待してる愛を囁く甘いことばではないけれど、わたしには十分大ちゃんの愛が伝わってきた。
---End---