第42章 -マフラー-(花巻貴大)
「さっむーい‼︎」
宮城の冬は寒い。
コートに手袋…イヤマフしてホッカイロしててもやっぱり寒い。
「おまえ、マフラーは?」
「今日遅刻しそうで朝バタバタしてたら、忘れちゃったのー。」
朝は、走ってたし、急いでたから、寒さを感じてる余裕もなかったけど、やっぱり寒いもんは寒い。
特に寒い時なんて、首・手首・足首…って"首"のつくトコをあっためないといけないのに、一番大事な首を暖めるマフラーを忘れるなんて…。
「おまえ、相変わらず朝弱いよなー。特に冬!」
「朝練で慣れてる貴大とは違うんですー。」
「もう朝練もないけどなー。」
「でも、今日早かったじゃん‼︎」
「あー。今日は岩たちと自主朝練つーの?息抜きがてら、久々体育館行ったわー。」
「じゃあ、朝起こしてくれればよかったのにー。」
「起こしたら起こしたで、おまえ怒るじゃん。"勝手に部屋に入るなー"とか、"寝顔見るなー"とかさ。」
「それは‼︎前に貴大が勝手に入って人の寝顔の写メ撮ったから‼︎」
しかも、可愛い寝顔だったらまだしも、変な顔のだったし…
「あ〜あれな〜(笑)せっかくおもしろかったのに、結局きづなが消したじゃんかー。」
「当たり前ですー!部屋に入らなくても、LIN◯とか電話でいーじゃん。」
「なになに〜?きづな、おまえ、オレにモーニングコールしてほしいの?オレの声で起きたかったとか(笑)?」
「ちが…っ‼︎違いますー‼︎そんなコト言ってないでしょ‼︎」
「ほんとか〜?」
「…っ⁈」
急に貴大がわたしに目線を合わせて、顔を近づけてきたので、思わず赤くなってしまう。
「あ!図星だったりしてー(笑)」
「〜〜っ‼︎もうっ‼︎貴大のバカ‼︎」
身を屈めていた貴大の首元からマフラーをスルリと外して、自分の首に巻いた。
「うおっ⁈さみぃっ‼︎コラ!きづな、返せよなー?」
「貴大が悪いんだもん。あ〜あったかい♪」
「ふーん。そぉ出るんだ〜?じゃあ…マフラー代よこせよな?」
「お金取るの⁈」
「いーや♪」
…チュ。
「貴大っ⁈い…今っ…⁈」
「マフラー代…な♡うぁっ…さみぃっ‼︎」
貴大はそのままわたしの手を取り、先を進んで、顔を見せてくれない。
でも…わたしも顔真っ赤だし…マフラーは返せそうにない。
---End---