第39章 -ババ抜き-(岩泉一)
「ねー‼︎わたしたちもババ抜きしよっ‼︎」
「は?二人でか?」
お正月特番をわたしの部屋でハジメと一緒に見ていたら、特番恒例のババ抜き企画が始まって、わたしも無性にババ抜きがしたい気分になってきた。
「二人でも楽しいかもしれないよー?徹いないし、他にいないもん。」
「あいついねーんだから、もっと他のコトしねぇか?」
「え…?」
いつもより低いトーンのハジメの声…。
隣にあった手をギュッと握られ、ジッと見つめられてしまう。
徹は、年末年始は家族で海外に行ってしまったので、珍しくいなくて、今年はいつもより静かなお正月なのに、ハジメの一言で、わたしの心臓はバクバクうるさくなってしまう。
「い…今はババ抜きしたい…。」
わたしは慌ててハジメから離れ、トランプを探した。
クリスマスにハジメに告白されたけど、付き合うコトになっても、わたしたちは、今まで通りで何も変わっていない。
「はぁ…わかったよ。やればいーんだろ?」
ハジメはちょっとため息をついたけど、トランプを受け取ると器用に切って、カードを配ってくれた。
「じゃ…わたしからね。」
当たり前だけど、二人だけのババ抜きだから、あっという間に二人とも手元のカードはなくなっていく。
「ほら、やっぱ、つまんねーだろ?」
二人のカードが合わせて三枚になり、ハジメの番になると、ハジメはジーッとカードを見ながら口を開いた。
カード二枚…ジョーカーとスペードのエースを持っているのがわたし。
ジョーカーは最初から、わたしのトコにあって、ハジメは一度もジョーカーに触れていない。
ハジメがエースを引いたら、わたしの負けだ。
「ココからが楽しいんだよー‼︎どっちかなーって2分の1の確率でハラハラするでしょ?」
「じゃあ…なんか賭けねぇか?」
「賭け…?」
「負けたほうが勝ったほうにキス。」
「えっ⁈」
わたしが答える前に、ハジメはわたしの手元からカードを一枚引くと、そのまま流れるようにキスをした。
「ハ…ハジメっ⁈」
「きづなの負けだろ?」
たしかにわたしの手元にはジョーカーが残っているけど…
「か…賭けになってない…。」
「負けたほうがキスだから、きづなからしたかったか?」
わたしの心臓は…全く静かになりそうにない。
---End---