第38章 -花火大会-(月島明光)
「はぁ…っ…大丈夫か?」
「…うん。」
「……」
怒ってる…よね…
明光くんの声がいつもより低い気がする。
わたしが散々頼み込んで一緒に行ってもらった花火大会。天気予報は晴れだったのに、途中でまさかの大雨…どうにか駅まで行ってそのまま地元まで帰れたけど…。
ただでさえ、貴重な休みに連れ出しちゃったし…そりゃ怒るよね…。
「…ごめんね。」
「…何が?」
…やっぱり怒ってる。
「…傘、買ってくる。」
「待てって。」
「…⁈」
気まずくて、1人でコンビニへ行こうとすると、突然に腕を掴まれてしまう。
「明光くん…?」
「なんでそんなにオレのコト避けるの?」
「え…?」
意味がわからず、思わず明光くんを見上げてしまう。
「きづなはさ、花火大会行きたかっただけ?」
「…?」
「それとも、"オレと"花火大会行きたかったの?」
「それは…」
それはもちろん、明光くんと行きたかったけど…そんなこと恥ずかしくて言えないよ…。
「明光くんのコト、避けてないよ。」
自分の気持ちをうまく伝えられず、質問をはぐらかしてしまう。
「避けてただろ?人すごいから、手繋ごうとしたらパッて避けたし。」
「…っ⁈あ…あれは…」
「あんず飴一口もらったら、急に黙って、残り食わないし。」
「…っ⁈それ…は…」
「浴衣もすげぇ似合ってて大人っぽいのにこんな濡れて…他のヤツに見られたくないから離れてほしくないのに、どんどんオレから離れ…」
「ち…違うっ‼︎」
「え…?」
色んなコトを誤解されていて、思わず明光くんのことばを遮ると、今度は明光くんがポカンとしていた。
「手繋げなかったのは、指が触れただけでドキドキしちゃったからだし、あんず飴は…その…間接キスかもって思っちゃったら食べれなくなっちゃって…は…離れたのは、浴衣濡れて恥ずかしいし、明光くん、こんな目に遭って怒ってるかな…って思って…だから…⁈」
「怒ってないよ。」
気持ちが溢れて一気に話している途中、気がついたらわたしは明光くんの腕の中にいた。
「オレは、"きづなと"花火大会行けて嬉しかった。」
「え…?」
「好きだよ。きづな。」
明光くんの腕の中はとても温かくて、雨で濡れたはずなのに、わたしの胸は一気にポカポカになった。
--- End---