第37章 -ねがいごと-(岩泉一)
七月七日…七夕…
織姫と彦星が一年に一度会う⁈
そんで願いごとを短冊に書くと叶えてくれるだ⁈
及川みたいなメルヘン野郎じゃねーし、
んなもん、信じちゃいねーけど‼︎
でも…
でも…願いが叶うなら‼︎
間に合ってくれ‼︎
学校の中なのに…
校門から部室までの距離は近いのに遠い。
ガチャッ…バンッッ‼︎
「きづなっ‼︎‼︎」
「へ…?いわ…いずみ…?」
「はぁ…はぁ…」
さすがに校門からの全力ダッシュはきちぃ…。
でも、学校出る時に花から聞いた話に
居ても立っても居られなかった。
「ど…したの?水…飲む?」
「はぁ…はぁ…いらね。」
オレはペットボトルを受け取る代わりに
差し出してくれたきづなの手をギュッと握った。
「…っ⁈」
「おまえ…あの先輩と付き合うのか?
オレじゃダメか?もう遅いか?オレ…‼︎」
「あ…の…岩泉?」
さっき花から聞いたあの話…
*----
『今日テニス部騒がしいと思ったら、
OBの先輩来ててよ〜。ほら、去年卒業した
及川より人気あったイケメンいたろ?』
『マッキー⁈オレのほうが絶対モテてたから!』
『あぁ。いたな。』
『岩ちゃん⁈』
『で?』
『ちょっとまっつん‼︎
もうちょい及川さんに興味持とうか?』
『宮岡に告ってたらしー。』
『…⁈』
『金田一が見たらしいんだけど、
あいつ真っ赤で…って、岩⁈』
----*
「きづなが好きだ!誰にも渡したくねぇ!」
必死すぎて、気がついたら、
オレは、掴んでたきづなの手を引き寄せて、
そのままきづなを抱き締めていた。
「岩泉…?あ…あのね?」
「…おう。」
「佐伯先輩と…付き合ってないよ?」
「は⁈おま…っ⁈」
やっべぇ…オレ、早まって…⁈
たしかに花も…先輩が告ってたっつっただけで、
きづなと付き合ってるとは言ってねぇ…。
「佐伯先輩と付き合ってないと…
岩泉の告白…無効になっちゃう…?」
「は⁈何言って…?」
思わずきづなの顔を覗き込むと、
真っ赤になりながらも少し不安げなきづなが
オレの顔を見つめていた。
「佐伯先輩と付き合ってるって思ったから、
告白してくれたんでしょ?それがなかったら…
岩泉の気持ち聞けなかったかな…って。」