第36章 -とことん優しく-(及川徹)
「徹〜眠い〜」
「え〜?寝ちゃうの〜?」
眠いのはほんと。
でも、久しぶりに徹とゆっくりできるんだから、もちろん寝るつもりなんかない。
「寝るなら、せめてココで寝て〜」
「ちょっ…」
急に徹に手を引かれ、そのまま徹に抱き締められてしまう。
「きづな〜好き〜♡」
「徹っ‼︎痛いってば〜」
「照れてるの〜?かっわいーい♡」
「照れてるとかじゃなくてー‼︎もうっ‼︎」
ほんとは嬉しいけど、そんなコト恥ずかしくて言えないだけなのに…。
徹はそれをわかってて言うからなぁ…。
「ねぇ、シャンプー変えた?いつもと違う〜。」
わたしを抱き締めたまま、徹はわたしの髪を触って遊び始めた。
「よくわかったね〜。◯◯っていうヤツにしたの。徹、キライ?」
「ううん!前のより好き〜!◯◯って、△△坂のマイコちゃんがCMしてるやつだよね〜?」
「…‼︎…うん。」
「あのCMかわいいよね〜。」
前に徹が△△坂ならマイコちゃんがかわいいって言ってたし、わたしも好きだけど…
「きづな?どしたの?」
「そんなにマイコちゃん好きだっけ?」
「△△坂なら一番好きかなー。」
「ふーん。」
聞かなきゃいいのに、つい聞いてしまったのは自分だし、深い意味はないってわかっていても、なんかイヤ…。
「え⁈拗ねてる⁈なんで⁈今、拗ねる要素あった⁈」
「別にー。」
徹はわたしの顔を覗き込んでくる。
「きづな〜?」
「やーだー。」
徹にくっついてるのが辛くて、離れようとするけど、徹はそれを許してくれない。
「なぁに拗ねてんの♪?」
「拗ねてないー‼︎わたしじゃなくてマイコちゃん抱き締めればいーじゃん‼︎」
「そんなのムリに決まってるでしょ?何言ってるのさ?」
「ムリじゃなかったら抱き締めたいんだーー⁈」
自分が無茶苦茶言っているのは十分わかっている。でも、小さな小さな嫉妬が止められない。
「はぁ…。そーゆーのを拗ねてるっていうんだよ?」
徹はため息をついて、わたしを抱き締める腕の力を緩めた。
優しい徹もいい加減呆れるよね…
「ごめん…」
…チュ。
「徹…?」
「でも、いくら拗ねても、オレが好きなのはきづなだよ?」
徹はそう言うと、また甘いキスをした。
「きづな、大好き♡」
---End---