第30章 夏、避暑にて。
「また来ましょうね?」
肩口から唇を離し顔を上げれば、髪をかきあげこちらを向くリエーフの瞳。その背後には宵闇に浮かぶ猫の爪のような細い月。
柔らかな視線にこちらの視線も柔らかくなり、そのままこくりと頷くと、それを肯定と受け取ったリエーフは私の耳元でふわりと囁く。
「次はおんなじ苗字で、ね?」
ちゅ、と耳元に感じる音。それと共に上がる体温と顔の火照り。
私からの返事がないからか、耳元から顔を離し私を覗き込んだリエーフは、私の表情を見るとすぐに笑顔になる。
「美優さん、今までもこれからも好きです。」
とろとろに蕩けた笑顔で紡がれる愛の告白。
うまく出ない声の代わりに私は柔らかく唇を奪った。
end