第49章 渚の時間(2)
「…いい渚、アンタは子供なんだから、人生の上手な渡り方なんてわかるはずないの。私がそういうのは全部知ってる。私とかお父さんみたくならないように…アンタのために全部プランを立ててあるから。蛍大に入れって言ってるのはね」
母さんが 試験で落ちた一流大学だ……。
「単に大学のブランドで言ってるんじゃないの。学閥って言ってね。会社によってはその大学を出てるかどうかで出世が決まるの。蛍大出身者がトップを占める菱丸に就職して…」
母さんが入れなかった名門商社だ……。
「そして世界中を飛び回る仕事をするの!!あーあ 理想を言えば女の子が欲しかったわ」
……これも口癖だ
「私の親は勉強ばかり強制して…女の子らしさを磨く時間もくれなかった。だからルックス重視の総合商社にも落ちたのよ。だから自分の子には思う存分おしゃれを教えるつもりだったのに……」
僕にワンピースをあてながら言う……。
「ほら 長髪にさせてるからやっぱり似合う」
…知りたくもない。女じゃないし。殺気にも似たこの人の執念…多分僕はずっと逆らえない。僕の人生の主人公は僕じゃない。僕は…RPGの「母さん」の2周目だ。