第2章 あんまさわんな
「隼くーん…」
「……」
これはなんの拷問か。
夏休みも残りわずか、例の如く課題を放置しまくっていた俺がを部屋に呼びつけて手伝わせたのは一時間ほど前だ。なんで私がサボってた隼くんの尻拭いしなきゃなんないのとぶつぶつ言いながらもは俺に甘く、時間が経つにつれてむしろ俺よりも真面目に課題に取り組んでいた。
当の俺はというと、そんないじらしい恋人に見惚れてつい手元がおろそかになっていた。それを見咎めたは「隼くん全然進んでないじゃん!」ととうとうキレてさっきまでふて寝していたのだが、しばらくするとむくりと起き出して俺の背中に張り付き始めた。意味がわからねえ。
「おい…寝ぼけてんのか」
「んんー…おきてる」
「今まさに人の背中で寝てんだろーが。ねみぃならベッドいけ、オイコラ、そこで寝る態勢に入んじゃねえよ!」
「隼くん背中ひろくて安心する…」
んなこと知るか。人の話なんか全然聞かずに背中にすり寄るにさっきから腰がぞわぞわして冗談抜きでこのままだとやばい。ただでさえ部活だなんだと忙しかった夏休み、とはほとんど会っていなかったのだ。要はかなり溜まっている。そんな時にいたずらに密着されたら、健全な男子高校生の体が反応してしまうのは当然のことで。
の呼吸が規則的に落ち着き始める。マジで寝る気かこいつ、と俺はしかたなく身を捩ってを背中から引き剥がした。何も知らずに不満そうな顔をするに舌打ちし、こうなったら牽制しとくかと口を開く。