第5章 戦闘訓練開始
涙ながらに、踏みとどまった。
抱き締めながら頭を撫でると
『お父さん…お母さんっ;
お爺ちゃん、お婆ちゃん;』
親類全ては、母方の祖父母だけだったらしい。
唯一だったそれらは、簡単に消え去った。
だからこそ、怒りに飲まれかけた。
それによって得られる哀しみも、常人のそれではないだろう。
父方には祖父母も曾祖父母もいず、親類がいなかった。
そんなことがあってもなお
それでも、あいつは無理に元気に笑って小学校に通った。
だが、そこでひどい目に遭い続けて部屋に閉じこもり
『すべて私のせいだ』という概念を得て、自殺し続けていた。
裁判沙汰になって、なおさらにそれが顕著になった。
より塞ぎ込んで、何も食べず、何も飲まず…
それにかけた声が、救けになったらしい。
駆けつけた時にかけた言葉…
一点に集約して撃とうとしていたからこそ、本人を視れた。
それによって
居なくなった犯人に、いなくなってもなお
それに気付けず、撃とうとし続ける恵土を止められた。
裁判が終わった後
あの人と語り合った時と同様に、星を眺めながら話した。
その時の言葉と、昔にかけられた言葉と合わせて
少しずつ、押さえ込み続けてきた感情が蘇った。
と同時に…
少しずつ自分を取り戻し、元気になっていった。
そして今は元気に、隣に居る。
出久「君が凄い人だから、勝ちたいんじゃないか!!
勝って!!
超えたいんじゃないか、バカヤロー!!!(涙目」
勝己「その面やめろや、クソナード!!!」
モニタールームでも見えている景色を
隣で一緒に見ながら、遠い過去のことを思い出していた。
その時と同じくして、恵土もまた思い出していた。