第15章 悪夢
とある時、やっと気付いた。
人に、話しかけることができない。
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とある道徳の授業
ヒーローとヴィランについて、各々の考えを述べることになった。
ヴィランが嫌い、好き…
バカだと罵倒するもの、仕方がないと配慮するもの
色んな意見が、飛び交っていた。
それでも、私は…
ヴィランが好きで、よくわかると言ってしまった。
『人って、平気で嘘をつくんだよ?
建前と本音、表面上の正と負
表では、大好きだということもあれば
裏では逆に大嫌いだと陰口をたたかれることもある。
それらは別々で―
状況が変われば
あっという間に、手の平を反すかのように態度を変える。
世の中は残酷だし、それは人が作ったものじゃない。
色々事情もあるし、それまでの苦悩もある。
その上での決断と、想いが伴われた行動なら
それそのものは、とても重みのあるものとなる。
それなら、私は…(ごく)
とても、止めることができない。
ただ、救けることで対立することしか…
それは救いと呼べるのかな?
巻き込まれた人たちを助ければ、それで終わりなのかな?
…私は…
私は、ヴィランも救けたいよ。
ヴィランが振り回されることになった闇からも
そう思わせることになった、呪縛からも……
だから…
私は、ヒーローもヴィランもなく……
両方が、本当に大好きだよ。
誰も、死んでいいわけじゃない。
今までに遭った歴史の果てに得た、たった一つの命だから――
失っちゃいけない命だから…
それそのものがとても尊くて、大好きだから。
誰もが、間違う。
それを、正せれば…
二度と、繰り返さないようになれば……
それで、いいんじゃないのかな?』
各々が意見を飛ばし合う中
その、たった一つの意見は
多くの反響を呼んだ。