第1章 プロローグ
四方を海に囲まれた島国ーー”八百万界”。
人間・神・妖の三種類のモノ達が集い暮らすこの界は、未曽有の危機に陥っていた。
「ーーようやく、辿り着いた。ここに”べリアル”がいる。」
八百万界の何処か山奥。”私”や私の周囲にいる”八人の仲間”達が暮らすこの界に、黒舟が襲撃してきた。この界には不思議な土地の力≪界力≫がある。
この力が目的なのか、はたまた、別の理由があるのか、悪霊を使い八百万界の住人の数を減らしていき、絶滅まで追いやられていた。
「誰だろうと関係ねェよ!あー……さっさと終わらせて一杯やりてえ。」
山道を駆けていくと、徐々に魔元帥ーーべリアルが根城としている場所が目に入る様になる。
先頭にいる私の後ろで、酒好きの鬼が山道を走っているのに、酒が入っている瓢箪の水筒を開けて、飲んでいた。
「油断したらダメですよ。べリアルは……今、この界を半分を支配している≪魔元帥≫なんですから。」
「アマテラスの言う通りだよ。油断大敵ってね。……酒は飲むの止めなよ。」
世話好きなお姉さんである太陽の女神様。彼女の言葉に同調しながら、シュテンドウジに注意する。
好きな物を止められる事に、不満を表していたが、素直に聞き入れてくれたのか瓢箪に栓を付け、飲むのを止めた。
こんな不安定な場所で、しかも、走っている(皆、私のペースに合わせてくれている。)状態で飲めるとか、平衡感覚が凄い……とは思うけど、こっちがハラハラする。
「主様やアマテラス様の言う通りです。その力は桁外れと聞きますね。我々、神代八傑でも太刀打ちできるかどうか……。」
「ここまで来て弱音吐いてんじゃねえよ。邪魔者は誰だろうとブッ倒す!そんだけだろ。」
私とアマテラスの意見に賛成なのか、ウシワカマルは心配だと口にする。そんなのを屁でもない!なんて言うのが、スサノヲという暴れん坊だ。
いつもの様に俺様が!というのに呆れつつも、いつもの事だからこそ、こんなラスボスとの戦いの直前、心配しかない私の心にも安心が出てくる。
「アンタってホント単純バカね。まあ、分かりやすくていいけど。」
そんなスサノヲの隣を走る、彼のもう一人の姉も呆れた様に溜息を吐く。
本当に、ラスボス前の雰囲気なの?と疑問に思っちゃうが、これが彼等にとっての”いつも”の事なんだ。