【HUNTER×HUNTER】pleats-プリーツ
第93章 93話
翌日
ガチャ…
がらんどうになった部屋の扉を閉め、鍵をかけた。
「それじゃあこれ、よろしくお願いします。」
ウイングさんの名義で宿を取っていたので、彼に鍵を渡す。
「はい、確かに。名前さん、これでしばらくお別れですね。」
「………。」
じわっと涙腺が痛くなる…
思わず下を向くと、ズシが見えた。目いっぱいに涙を溜め込み、耐えている様子だ。
「っ……、はぁ〜〜〜だめだぁ〜〜…」
ズシは我慢できているのに…
瞬きをした瞬間に大粒の涙が溢れて、私はもう諦めて上を向いた。
悲しい雰囲気にしないように、開き直った態度を取ってしまったが、自分のこういうところが子供っぱくて嫌い。
「また、いつでも来ていいんですからね。」
最後まで限りなく優しい言葉をかけてくれるウイングさん
「い…、今そんな事言われたら、泣いちゃうじゃないですか〜〜〜。」
「その前から泣いていましたよ…」
耐え切れるわけもなく、更にだばっと涙が溢れると、ウイングさんは困った様に笑った。
小首を傾げて、ハンカチを差し出してくれる。
「君は本当によく泣く子ですね。」
屈んで涙を拭ってくれるウイングさんに、私は思わず抱き着こうとして一旦固まった。
流石に大人の男性に対して、と妙に冷静になってしまいウイングさんを見る。
「2人とも、仕方ないですね。」
その言葉に目を横にやると、結局ズシもしっかり泣いていた。
そして子供の様に泣く2人を、ウイングさんは両手で抱きしめてくれたのだ。
忘れない、優しさ、匂い、温もり、全部。
「ウイングさん〜〜〜っ、ズシ〜〜〜っ…ありがとう、ありがとうございましたぁ…!!」
ひとしきり泣いた後、ゴンとキルアが迎えに来てくれた。
「お前また泣いてんのかよ〜」とキルアに呆れられつつも、何とか涙を収める
そして3人、宿の前の道に並んで別れを告げたのだった。
「お世話になりました!押忍!!」
バイバイ 天空闘技場!!
20230617