第10章 猫⑩
「お互い知ら無い事が多いって言ってたでしょ?だから、おれの事知って好きだって言ってくれるなら。その時はおれと付き合って欲しい」
「……え?」
「そんな驚く事?」
この数十分の間に、おれはおれの知らないあやねの顔をたくさん見れた。
いつも大人っぽいあやねがこんなに動揺して、こんなに幼い部分があるんだって……今までクロだけが知ってた幼馴染としてのあやねをおれは今知ったから。
「ううん、ごめんね。そうだよね、うん。私ももっと研磨の事知りたいから」
柔らかく笑うあやねはやっぱり可愛くておれも思わず笑ってた。
それから、おれはあやねの部屋で知らなかった事をたくさん聞いた。
大学の事、サークルに入ってる事も知らなかったしバイト先が居酒屋だったり意外な事だらけで……あやねの事、本当に何も知らなかったんだって思い知った。
「ねえ、研磨今度どこか一緒に行かない?」
「いいけど、おれ女の子が好きそうな場所知らないよ?」
「どこでもいいの、研磨と一緒に出掛けてみたいから…」
少しだけ恥ずかしそうに言うあやね、おれの事知ろうとしてくれてるのが分かる。
インドア派のおれだけど、あやねの提案におれは頷いた。