第2章 其ノ壱
二『 心にもあらで憂き夜に長らへば
恋しかるべき 夜半の月かな~』
母『まぁま。和ったら。 もしかして、
恋しいお人でもできたのかしら?』
馬の毛をブラシで整えながら歌っていると、背後から母上が近づいて来てそう言う。
二『いえ…。 母上。 そのようなことはございません…』
母『和? 確かに、この時代…思った人とは難しいかもしれない…けど
私には何でも相談して欲しいわ…。 私はどんな時もあなたの味方よ…』
そう言うと母上は、二宮(息子)の体を胸に抱き寄せると優しく髪を撫でる。
二『…ありがとうございます。 母上…
でも本当にそのようなことではないので。
当分は安心ください。』
愛する人は…ただ一人だ。
例え命尽きようとも……
そんなこと言ったら…父上も母上もきっと卒倒されてしまわれるだろうな。