第8章 其ノ漆
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の
声聞く時ぞ秋は 悲しき
*****
櫻『…私は
徳川についておりました、服部半蔵と申します。
しかしながら向こう側の裏切り行為によって出てきた所をあんな目に…』
何度か、手ぬぐいを絞り直しながら体を拭き髪を洗ってあげる。
大『そうであったか…。
私が名付けた翔という名前は、診てくださっている東山先生の亡くなった弟殿の名前なんだ。
半蔵殿を助けたちょうどあの場所で…
弟殿は… 私も全く手助け出来ず…
先生も片足を失った…』
櫻『それで…
だから…こんなにも親切に…
して下さるのですね…』
その時の事を振り返って表情を歪めると、そう言って智の手をそっととると指を絡めるようにして握った。