第5章 其ノ肆
花の色は移りにけりないたづらに
わが身世にふるながめせしまに
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相『名を翔にするとは、 智様…
確信犯であろうな。』
二『……何故。
兄上の事がこんなにわからなくなった
のは初めてです…』
先生のところへと出発した智が離れると、
和也は消え入りそうにそう言う。
相『きっと…何か深い事情があるのだと思いますよ?
何も、そこまで落ち込まれなくとも、和也殿も仲良くされたら良いではないですか。』
二『分かっている……ただ敵の者を連れ帰って来たのではない事くらい…
しかし…何か嫌なものを感じるんだ…』
相『兄上の気持ちが… 彼に…
向こうにばかり
いきそうで…それが怖いのでしょう?』
そう言うと相葉は頭を数回撫でて、そのまま手のひらで首を引き寄せると唇を重ねてきた。