第25章 三・其ノ肆
立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる
まつとし聞かば 今帰り来む
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深いため息の後、承諾してくれた東山がそっと手をとると強く握りしめる
東『…では、和也を連れて行く事は私からの案で智は知らぬうちに引き離すという事にしておこう。
しかし、私の行き先はお前に告げることはないからな。 もう二度と和也と会える事はないかもしれないぞ。
その覚悟はあるのか……?』
智『………はい。 たとえ会えなくとも……
先生のお側で生きていてくれる……それだけで私は
私にはもう十分にございます。』
そう言うと自分からも東山の手を強く握り返した。
そうして……それから智の身体の回復と同じ頃、すぐに母上はうわごとのように和也の名を呼びながら亡くなったのだった。