第21章 ニ・其ノ拾
その瞬間視界は暗転して刺されたと思った身体には痛みは無くて、
抱きしめて覆い被さってきた智の背中に回した手のひらには生温かな赤色がじわじわと出て
あっという間に布団の方までも朱に染めた。
二『…あっ……兄……上 』
櫻『な……ぜ…… 智……様… う…あ~~~』
血の滴る短刀を手にしたまま後退り去っていく翔を追うことも出来ず、
ただ、智の背中を押さえるようにしながら抱きしめる。
大『…はぁ……う…っ…… 和…也 怪我……は無い
……か……?』
二『…うくっ…… 。 兄上……私のために……っ』
みるみる血の気を失い脱力していく智の腕の中で、何度も何度も首を横にふりながら溢れ出る涙をこらえる事ができなかった。
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二部完…三部へつづく