第20章 二・其ノ玖
松本の腰に手を回して、顔を背中に埋めるようにくっ付けたまま何もお互い言う事もなくあっという間に、
真田の屋敷へと到着する。
松『では、私は馬を戻して参りますので。翔殿は先に行かれますか?
あ……いやまだ御兄弟は起きてらっしゃらないかもしれないですね。 私起こして参ります。』
櫻『いや、だったら智様の所へは私が…。 才蔵は、
和也…殿の方を頼む。』
松『翔殿… 今、和也とお呼びに……』
櫻『べ……別に、こんなのたんなる気まぐれだっ。
アイツを認めたわけではけしてない』
松本がニヤニヤとするとそうぶつぶつと言いながら、
顔を赤くして去って行く。
櫻『智様…。 翔です。 ただいまもどりました。
開けてよろしいでしょうか。』
少し控えめにそう声をかけると返事の代わりに聞こえてきたのは、和也の妖艶な声で…
少しの隙間から覗いてみると二人の乱れる姿が目に飛び込んできて、すぐに目を硬く閉じると手の平に爪が食い込むほどに強く手を握ったのだった。