第18章 二・其ノ漆
言葉につまりながら、櫻井の頬を涙が流れた。
松『先生はな… 実は奥様も病気で亡くされてるんだ』
櫻『え……そんな……』
松『いや……。 こんな事言うのは酷であったな……』
櫻『……いや。 すぐには無理だけど… でも
考えてみるよ。』
松『ああ。』
すると、スッと松本の手が伸びてきてさらにこぼれ落ちる涙を指で優しく拭うと逆の手を首筋に回して引き寄せると唇を寸止めする。
松『逃げないのか?』
櫻『逃げても…いいのかよ』
松『いや。 翔… 』
そう名前を呼ぶとそっと何度も唇を合わせる。
櫻『んっ……ふぁ……ん……才…蔵…』
やっぱり…コイツの唇… 気持ちいい……
憎たらしい。
そう思うのに気持ちが堕ちかけたその時、準備を終えた東山から声がかかった。