第18章 二・其ノ漆
逢ふことの絶えてしなくはなかなかに
人をも身をも恨みざらまし
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櫻『おい…。 いつまで付いてくるつもりだ?』
松『どちらまで行かれるのですか? あなたが
心配なのです』
櫻『私の心配ではなく兄弟の心配でしょう?
東山先生のところに行くだけだからもう付いてくるな』
松『兄弟の心配をするということでは私もあなたを
兄弟のように思って心配しているのです』
櫻『何を… そんなのは真田の家に入る為のただの
口実… 私の事なんて』
松『そんなこと言って本当は嬉しいのでしょう?
お望みでしたら、私がその寂しさ…慰めてさしあげ
ましょうか?』
そう言うと側の木へと追いこむと両手で挟むように
して口づけ寸前まで顔を寄せてくる。