第3章 残暑
重い足取りで車に向かい、鍵を開け車内に滑り込む。
運転席に腰を落ち着けると、エンジンを回すでも無く、ぼーっとバックミラーを見つめていた。
あんな嬉しそうな顔してるくせに、なんであたしを引き止める必要があるんだか。
さっさと彼女に連絡して仲直りすればいいじゃないか。
いやまったく理解出来ないと、香苗は頭を横に振る。
ふと啓太の言葉を思い出した。
「可愛い香苗さんが悪いんですよ?」
原田からしたら、可愛くて、気持ちよくて、何をやっても優しく許してくれる香苗さんが。
「都合のいいあたし」が、全て悪いんですって。
「あはは・・・あははははははっ!」
もう、涙なんか超えて笑いしか出ない。
滑稽だ。お笑い草だ。もはや喜劇だ。
なんて馬鹿馬鹿しい生き物なんだろう、あたし達は。
寂しさを埋める相手を、性欲のはけ口を求めたのは、いつだってそっちじゃないか!